2006年10月22日

鴉昇天

翼が欲しい。
そう願っていたのです。

別に「束縛から逃れたい」とか「飛躍を求めて新たな可能性にチャレンジしたい」とかの比喩ではありません。
単に鳥類の翼(羽根ではなく)が欲しかっただけ。ある程度の大きさがあって、できれば漆黒・・・鴉(カラス)あたりが適当だな、と。

黒天使の人形を作ろうとした私の前に「翼のリアリティ」が立ちはだかったのです。
なるべくそれらしい質感と形にしたいけど、構造がよくわからない。

翼とはすごいものです。空を飛ぶという機能も驚異だし、形が美しい。たためばボディにぴったり沿い、広げても羽根が希薄にならないフレキシビリティが見事。やはり筋肉が伸び縮みしてそうなるんでしょうか。

下着や服を作るときにはしばしば分解・分析に取り組む私。本物の翼を分解すればきっといいものができるだろう。
むしろそのまま干物にして人形にくっつけちゃったらどうかしら。無知な素人の半端な加工により腐ったり虫が湧くおそれなんか頭にないのでした。

問題はどうやって烏の翼を手に入れるかってこと。
カラスってのは凶暴で頭がいいから、虫取り網なんかで捕まえるのは無理だろうな。
理想は・・・歩いていたら目の前にカラスがぼとっと落ちてきて死ぬこと。

そんな都合のよい事態にはたして出くわせるのか? いちおう賭けてみよう。楽観的な人だ。
で、はさみを持ち歩くことにしたのです。ドイツ土産にもらったヘンケルの小型剪定ばさみ。切れ味抜群。血が出るかもしれないから、黒いポリ袋と100円ショップで買った使い捨て手袋も常備しました。





そして数年。

人造の羽根を貼りつけた黒い天使はとっくに完成して、ロサンゼルスに旅立ちました。
Angel

その後ガチョウの羽根を貼りつけた白い天使もできました。

バッグの中にカラス3点セットを眠らせたまま、翼を欲しがったことなどすっかり忘れておりました。
普段からあまり出歩かないし、そもそも我が街は特殊なゴミ収集システムによりカラスが少ないことで全国的に有名なのです。死体どころか、生きたカラスだって珍しいくらい。

なのに、まさかの棚ボタに遭遇してしまったのです。

図書館からの帰り、遠回りして散歩がてら川沿いの細い道を歩いていたら、カラスが落ちていました。目を開き、くちばしを開き、ピクリとも動かず。
目の前に落ちてきたわけではないが、ほぼそれに近い状態。車道の真ん中で何分間も無傷でいられるはずはないんだもの。

おお、カラスじゃ、カラスじゃ。ついにはさみの出番が来た。リュックを漁ろうとして、ぎくり。数歩向こうに小学生くらいの女の子と男の子が立ってじとっと見つめている。どうも私よりも先に発見したみたいでした。道端に落ちてるゴミを拾うのに文句を言われる筋合いはないんだけど、興味津々の視線を逸らしてくれなくて、ヘンに決まり悪い。とりあえずポリ袋に突っ込んで人目のないところへ運び、翼だけ切り取って持ち帰ろうか。

そこへ車が走ってきたので、急いで翼の端っこをつかんで歩道に引きずりました。ずしっと意外な重量感。

子どもたちは相変わらず無言で私の手元を見つめています。
おまけに上空がやけに騒がしいのに気づき、見上げれば多数のカラスが群れているのです。カラスが少ないこの街になんで〜といぶかると、近くにうっそうと木が茂っていて、たぶん神社かそんなのがあるようでした。
カラスたちは電線に止まってぎゃあぎゃあ鳴きながらも、仲間の死体を注視しているのは明らかで、何羽かがしゅっと低空飛行でそばまで飛んできて、妨害めいた行動に出るのです。まるで私の意図を察したみたいで不気味。

結局、怖気づいて立ち去ることにしました。見つけてから2分と経ってなかったと思います。

子どもやカラスの邪魔が入ったからよりも、心構えが足りなかったというか、カラスの重さにビビッたのが最大の理由だとしておきましょうか。カラスってけっこう巨大な鳥なんだ。それにやっぱり血を見るのは苦手だしぃ。

実はこれ、昨年10月の出来事です。5年日記で見つけたネタ。
死骸も地面にも血は全く流れていなかったのですが、死因はいったいなんだったろうと後で不安になりました。もし鳥インフルエンザだったらどうしよう、翼に触った程度で深入りしなくて幸いだった。と、臆病な自分を慰めたのでありました。

ちゃんとした黒い翼にはまだ未練があって、機会あらば孔雀くんを作りたいんだけどなあ・・・。
投稿者:ルノ 22:15 | コメント(0) | トラバ(0) | 人形・ぬいぐるみ
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