世界最初の自殺者は屈原である。
これはまあ正しくないとは思います。
自殺(自由死)は人類に文明らしきものが芽生え始めたころからあったようですから。
むかーしお小遣いで自殺に関する本を買いました。内容はすっかり忘れ、記憶に残っているのは、巻末についていた年表の一番端っこに載っていたのが屈原ということだけ。それで屈原の名を見ると、反射的に「最初の自殺者」というフレーズが浮かぶのです。
屈原は楚の政治家・詩人です。国家のために尽力しましたが、なかなか受け入れられませんでした。直情的に正論を吐くような忠臣を、暗愚な君主はえてして煙たがり、疎んじるものです。よって国は滅び、屈原は流浪の後自殺しました。
世の中は汚れきっていて、清らかなのは自分ひとりだ。
人は湯浴みのあと、服のちりを払ってから身に着けるものである。
清浄な体に汚れた衣(世間)をまとうなんて我慢できない。
とかなんとか言い残し、汨羅の淵に身を投げたのでありました。
それを聞いて思ったものです。せっかくきれいに洗った体なんだから、服だって洗濯したてのほうが気持ちよいだろうに。
てのは、清潔意識に支配された現代ニッポンで安逸に暮らす輩の言いぐさであります。古代中国の話なんだから、ちりやホコリを払えば上出来じゃないですか。布だって貴重品だったはず。
とはいえ、我が国では誰もがそんなに清潔な暮らしを送っているかというと、はたして・・・。
キムタクが何年も洗っていないジーンズを穿いていた話は、私でも知っているくらいだから有名なんでしょうね。
いつかどこかで読んだ林真理子のエッセイ。女友達に「絹のブラウスはクリーニング代が馬鹿にならないでしょ」と言ったら、「あら、別に・・・」てな反応だったとか。彼女らは1回着るたびにブラウスを洗うわけではないらしいとあてこすっていたのです。
そりゃマリコさん、みんながみんなあなたのようなお金持ちってわけじゃありませんからね。
とりわけビンボーなこの私、冬は暖房費倹約のため、厚着で過ごしております。
この時期は汗もかかないし、入浴後に着替えるのは下着や肌着などで、外側に着るものは何日かもたせることになってしまいます(水や洗剤だって節約しなきゃ)。それらを身に着けるとき、決まって屈原を思い出し、風呂場のタイルの上で振るってほこりを払う真似をするのが習慣となったのです。
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