2007年03月17日

雑木売買

昨日かかってきたセールス電話は、北海道の原生林に生える樺の木から取れるなんたらのサンプルをお送りします、というものでした。「なんたら」がなんなのか聞き逃しましたが、美容液か健康食品か、まあそんなところでしょう。

北海道の原野といえば、思い出すのは原野商法。二束三文の荒れ地を高値で売りつけるものです。
とっくに根絶したかと思いきや、かつての被害者をターゲットに、詐欺の上塗りをする連中が出てきたとか。売るに売れない土地を抱えて困っている被害者たちに、今度こそ値上がりしそうです、代理で売ってあげますなどと言葉巧みに手数料を騙し取るのです。
一度だまされた人はだまされ癖がついてるからころりと引っかかる・・・というのが業界の常識らしいです。そういう人々のリストは重宝され、二重三重いや十重二十重に勧誘網がかかります。

なんの教訓も得とらん、学習能力ゼロ、よっぽどカネがあり余ってんだろうな。と、二次被害、三次被害に遭った人を非難するのは確かに酷です。悪いのは詐欺師であります。
しかし被害者に全く落ち度がないかというと・・・はっきり言って人迷惑な方々です。詐欺商法というものは騙される人がいるから発展するのです。騙されることは詐欺を助長しているも同然だと認識していただきたい。

怒らないでくださいね。
そんな人々はきっと実生活では親切で面倒見が良く、回りから慕われていることでしょう。
詐欺も不正もぴしっと見抜き、決してバカを見ることのない人間ばかりがあふれていたら、それはそれで味気ない世の中に違いありません。

私とていざそういう状況に置かれたら、はたして詐欺師をバッチリ撃退できるだろうか。
無知や思い込み、勘違いなどにより思いもかけない言動をとるのが人間というものです。

恥を忍んで打ち明けますと、私も原野商法に引っかかった経験を持つのです。

私は働くことが嫌いで、いろんな会社を転々としました。けっこう波乱万丈な人生・・・のわりに世間知らず。

とある不動産会社に面接に行ったら、すぐに採用され、翌日から勤務の運びとなりました。

オフィスは明るく立地もよく、制服は可愛くて(でもミニ丈)、給料もまあまあ。大手不動産会社と紛らわしい社名だけど、創立者の名字がそうなのであって、別に関係はないんだとか(この時点で怪しいと思えよ)。
社長はえらく傲慢な態度の20代の若造で・・・と、今だからそう言えるけど、コムスメに過ぎなかったわたくしの目には、颯爽たる青年実業家と映りました。おまけに電話つきのすごい高級車を乗り回していたんですよね(ケータイなどない時代)。

入社日は簡単な研修などを受けました。2日目にはさっそく現地説明会。社長自ら運転するその高級車で、売り出し中の山林へ連れていかれました。いっしょに入社したもうひとりの女の子といっしょに。

現地というのが「原野」だったわけです。
このへんに原野があるのかって? 場所は覚えていないけど、街の中心部から車で数十分の距離です。やや田舎という程度。車が乗り入れられるところですからね。
起伏があっていちおう山の中で、ひょろんとした貧弱な木がほぼ等間隔に生えておりました。自生しているのではなく、人手で植えられた雰囲気。ところどころに杭が打ち込まれ、ロープで分割されていて、何箇所かに「売約済み」の立て札。
片隅に簡単なテントがあり、テーブルが置かれていました。

そのうち営業マンがぽつぽつと見込み客を連れてきて、社長が木々の間を案内しながら売り込みをするのです。一区画いくらだか知りませんが、200万前後でしょうか。これらの木々が成長して数年後には1本数十万で売れるという話。

客はほとんどが高齢の男性。
私たち営業事務員の業務は、それら見込み客にお茶やコーヒーを出すことでした。ほんと、あっけないくらい簡単な仕事。空いた時間は雑木林をうろついてきのこを探したり。
お客さんが「もう帰る」と言おうものなら、営業マンが「まあまあ、お茶でもお飲みになってから」と引き止めるのです。
「今度はコーヒー」「ほら、紅茶をお出しして」と指示されるままに次々と飲み物を出しました。お昼には用意してきた豪華幕の内弁当を勧めて、買う気になるまで長居をさせようとの魂胆。

その日だけで2、3件売れたようです。ひとりのおじいさんはすでに1区画買ったけどさらに買い増しに来たとのことで、下へも置かぬおもてなしでした。

私はその翌日辞めました。勤務したのは都合2日。
いかがわしいような気がしたのが理由だけど、どのようにいかがわしいのか、自分でもわかりませんでした。当事者というものは、意外にことの真相が見えていないのです。

数年後、『原野商法』というものがクローズアップされ、ああ、あれもその一種だったのかと合点がいったのです。
その会社は手を変え品を変え、似たようなことを続けているのでしょうか。

「引っかかった」などと被害者ヅラしてしまいましたが、私は加害者だったのです。
ピチピチギャルの脚線美に目がくらんでつい契約してしまったおじいさんはいなかったでしょうが、多少は良心が咎めました。その日成約がゼロだったら良かったのに。

でもですね、おツム弱くて世間知らずのコムスメをたぶらかして共犯者に仕立て上げるという点で、詐欺商法は二重に罪深いと思います。
老人たちにアタックしていた若い営業マンの中にも、あの雑木がいずれ高級木材になると信じ込んでいた人もいたでしょう。でなければ説得力も弱まったに違いないのですから。

こういった商法に利用される人々は大勢います。
テレホンアポインターと呼ばれる職業はおおむねそんなものでしょう。実際に商談を行い歩合給を得るのは海千山千の営業マンだから、予約を取るだけのテレホンレディたちは、詳細を知らされていないし、罪悪感もないのです。
いまだ不況真っ盛りが実感の世、パートや派遣は差別され、夫は慰謝料も養育費もバックレるし、生活保護は厳しい条件をクリアしなければならず、生きていくためにはあれこれ選んでいられませんよね。
だまされる人々がいなければ、こんな仕事も成り立たず、求人もないはず(って、言い訳です。応募する人々も熟考すべき)。

ともあれ、小金持ちの皆さま。
世の中に楽して儲かる話なんて絶対にありません。儲け話を安易に信じ込むことは、あなた自身が財産を失うだけにとどまらないのです。詐欺師をはびこらせ、知らずに加担させられる人やほかの被害者を増やすことにつながるのです。
と、詮無き警告を再び発して終わりにします。
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投稿者:ルノ 20:57 | コメント(3) | トラバ(0) | 世相=世間相場?
この記事へのコメント
なかなかレアなご経験をお持ちですねぇ。見方を変えればルノさんもまた被害者なのではないでしょうか?

うむっ、私の持論!
本当に儲かる話は他人には絶対教えません、独り占めします(笑)。簡単に儲かる話を紹介するなどあり得ません。美味しい話には気をつけましょう!…です。

と言って、独り占め出来た経験は未だありませんが…(笑)。
shibaさん  2007年03月18日 12:21
被害者とおっしゃっていただき、ちょっと救われます。とはいえ、2日分の給料はしっかり請求しました。

気前よく儲け話を持ってくる人は、「相手が儲かる話」ではなく「自分が儲かる話」を持ちかけているに過ぎないんですよね。うまくすり替えて、相手が儲かるかのような錯覚をさせるのです。
世の中、ひとりが儲かるには誰かに損をさせるのが手っ取り早いのですから。
理想を追求すれば、みんなが儲かり、みんなが幸せになる方法がきっとあるはずなのですが。
管理人さん  2007年03月20日 20:09
人を騙してまで儲けようとする人の考えが私には信じられません。何でもかんでも「お金」がものを言う世界にしてしまったのは、果たして良いことなのか?人とのつながりや優しさなどが、置き去りにされて、さみしい気がします。

物は豊かになりましたが、心はその反対になってしまっている気がするのは私だけでしょうか?

騙す手口は巧妙になっています。気をつけないとね!
shibaさん  2007年03月24日 19:24
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