2007年05月09日

カーマニア

ジョン・ディクスン・カー(1906−1977)の熱狂的ファンは、推理小説家の中にもたくさんいます。カーはほかの巨匠たちよりもより強い思い入れや偏愛を抱かせるようです。首尾一貫して不可能犯罪に取り組んだ姿勢が驚嘆と憧憬を呼ぶのです。

現在に至るまで、カーほど不可能犯罪に取り組んだ人はいないでしょう。
エドワード・D・ホックはたいそう意欲的で知性にあふれているけど、短編作家だから小粒で地味な印象なんですよね。
国内では倉知淳が法月綸太郎に『天然カー』と称されました。不可能一辺倒ではなくロジック一辺倒の人。なのに味があります。

不可能犯罪とは「密室殺人」に代表されるように、論理的に起こり得ない状況で発生した事件の謎を解くものです。
いわゆる「トリック」が重視され、その派手な演出や非現実味が「堅実に人間を描く」タイプの作家や社会派小説愛好家などから蔑視される傾向にあります。
とりわけカーの作品では降霊術や魔術などオカルティズムが多用されています。毒をもって毒を制す、より不自然なもので不自然さを覆い隠すという絶妙の手法が冴えています。それだけにB級のイメージもぬぐえないようです。

そしてまた、カーには駄作も多いのです。最近になって翻訳されたものなんか、なるほど今まで埋もれていたわけだ〜と納得するようなものばかり。それでもファンならいちおう手に取る。なんたってカーですからね、その味わいは不滅です。

名作とされるものでも、キャラクター造形なんかちょっとヘンだったりします。フェアプレイを旨とする本格推理では、誰が犯人であってもおかしくない状況が求められます。カーでは絶対に犯人でない人がたいていいるんですよね。それでも意外な犯人が出てくるんだからスゴイ。とマニアなら絶賛。

最近は読んでいないのでよく思い出せないけど、私の好みは『緑のカプセルの謎』『曲った蝶番』『髑髏城』など、だったか。
名高い『火刑法廷』はちょっと極端すぎて合わないかなー。

ところで、藤原義也さん、お元気ですか。
って、見ず知らずの市井の人の本名を取り上げていいんだろうか。まあ、公の場に名前が載っているんだから差し支えないでしょう。

ミステリマガジンという雑誌を一度だけ購入したことがあります。たまたまカー特集をやっていたので。
最近調べものがあってめくっていたら、読者コーナーに大学一年生の藤原義也さんが載っているのが目に留まりました。
『火刑法廷』が好きと言うものの、ミステリへの熱意はまあまあって感じ。が、その語り口のセンスに、このヒトはその後この方面(文壇かマスコミあたり)に進んだのではなかろうかと思って、ちょこっと検索してみたら(ヒマジン)、やはりそのようでした。
現在どうなのかは不明ですが。


付記:
後日手に取った『ジョン・ディクスン・カー<奇蹟を解く男>』というぶ厚い本の訳者あとがきに、「国書刊行会編集部の藤原義也氏」への謝辞が記されておりました。
国書刊行会といえば、私にとってはラヴクラフト関連を買い漁った記憶があります。
投稿者:ルノ 10:39 | コメント(0) | トラバ(0) | レトロ
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