2012年03月31日

ホモ・サピエンス・リンネ

なまじ知恵なんてものを持ったせいか、人間は「なぜ?」にとりつかれた唯一の動物となりました。

人間と犬の違いは、知りたい欲求のあるなしだという意味のことを、ファーブルは書いています。
わからないことを知りたいという願望は、ときとして人々を苦しめます。

ものごとには原因があって結果がある・・・当たり前のようにも思えます。原因や理由を追究することで、対策や改善点を探り、高度な文明の発達へつながったのです。
それでも世の中には、いくら調べても原因がつかめないことも多々あります。人類が未熟なせいでまだわからないだけなのか、そもそも原因が存在しないのか。

金持ちの老夫婦が強盗に殺害されて金を奪われたという事件は、比較的わかりやすい事例です。年寄りは抵抗が少なくて楽に殺せるだろうと強盗は考えたのでしょう。もし被害者が悪辣な高利貸しで、非道なやり口で蓄財して恨みを買っていたのなら、さらに納得がいくかも。

幼い少女が変質的な男に誘拐され無残に殺されるという事件がときたま起こります。遺族は「なぜこんなことを?」と悲痛な叫びをあげますが、その理由はたいてい当の犯人にも説明できない衝動であるようです。
わけもなく人殺しをしたい人間は、どの国にもいつの世も散発的に(よりはもっと多く)現れています。これはもう、そのようになっているとしか(現時点では)思えません。理由を追求してもむなしいばかりです。

もしも殺された子に「責任」があったとしたら、納得できるでしょうか。たとえば犯人を挑発したとか。
無理です。いかに悪辣な高利貸しでも殺されていいはずはないのに、ましてこの世の悪を知らない幼い子どもですよ。その子がどんなようすであったろうと、犯人の殺意はすでに抑えきれない状態だったので、逃れることはできなかったのでしょう。

「しかし、どうしてうちの子が標的になったのか」肉親はさらに問いかけるでしょう。現場ではほかに何人かの子どもが遊んでいたし、もっとかわいい子もいたのに、なぜたまたまうちの子が?

どうしても理由づけをしたければ、ひとつの説があります。
前世で悪いことをしたむくいなのだ、と。

あるかどうかも定かでない「前世」とやらに責任を押しつけるのは無茶でしょうか。ま、ないという証明もできていないようだから、人間とは想像力豊かなものです。

仮に全世界の人々が「前世」「来世」の存在を信じ、人類の幸せを願ったなら、それなりによい結果を生みそうです。
今幸せな人は、来世もかくありたいといっそう善行を積むし、不幸せな人は、自業自得だから人を恨むわけにはいかない、現世では我慢して世のために尽くせば来世には必ず報われると、やけにならずに済みます。さらには現世の努力が現世の報酬として返ってくるサイクルもあるから、いつまでも不幸でいるわけでもないでしょう。
たった3代で、すべての人が幸せになれるという理屈。

むろん、そううまくはいかないのが、人間の罪業か。

前世説に説得力を失わせる要因として、大量殺人や大事故、大災害が考えられます。

通り魔事件のあったちょうどその日時に歩行者天国へ行ったのは、前世に悪いことをした人々ばかりなのか。脱線した列車に乗ったのも前世の因縁であり、ある地域が大地震に見舞われたのは、そこに前世の悪人が集まって暮らしていたから?

その通りである。と、コテコテの前世論者は言うかもしれません。
前世に悪業を重ねた人間は、無意識にある地域に引き寄せられてしまい、その数が飽和に達すると、絶対者が災害を起こすのだ、ただし悪事の程度が軽かった人も混じっているから、彼らは家を失う程度で済む、とかなんとか。
いやあ、ちょっとバカバカしい気がしますね。それだと「自分の意思」なんてものは無意味であり、どんな行為も前世の因縁となり、改善の余地も消えます。

ごくまれに、前世の記憶を持つ子どもが出現し、知っているはずもないことをいろいろとしゃべってまわりを驚かせたりします。
それらの事例を真面目に調査・研究する学者もいます。ただし、生まれ変わり信仰のない社会ではめったに起きないことや、話す内容が必ずしも当たっていないことなどから、その地域に根づいた生まれ変わりの文化や思想が「思い込み」を育てたという見方が正しいようです。

来世を信じることができたなら、やみくもに死を恐れる必要もなくなります。あるという考え方に充実した説明がつくなら、信じたい気分も個人的にはないではないのですが。
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投稿者:ルノ 09:48 | コメント(0) | トラバ(0) | 生老病死
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