2012年07月30日

おたくの食卓

よそんちの食事になど興味はないのですが、『家族の勝手でしょ!』(岩村暢子/新潮社/2010年)には、ちょっとびっくりしました。

これは、現代日本の普通の家庭(おおむね30〜40代の夫婦+子ども)の食卓風景を、当該主婦が撮影した現場の写真とともに紹介した本で、いわゆる「食の乱れ」というものが赤裸々に表れています。

お菓子とジュースで朝食、冷凍ピザ+カップ麺+クリームパンなど炭水化物重ねの昼食、インスタント食品・出来合いの惣菜・加工品尽くしの夕食。野菜はほとんど見当たらず(高価だし、調理が面倒だし、すぐにしなびて無駄になるし)、魚料理は敬遠される。
食器洗いの手間を省くために、テーブルにパンなどをじかに置いたり、食卓に出した鍋から各人が直接ご飯茶碗におかずを取って食べたり。
家族そろって食事を始めることはまれで、てんでんバラバラに好きなものをつまんだり、好きなものが食卓になければコンビニやファストフード店に買いに行く夫や子どもも珍しくない。
親は子どもの偏食には異様なほどおおらかです。「子どもにピーマンを無理やり食べさせる」ステロタイプの母親像は、もはや幕内秀夫の妄想の中にしか存在しないのか。親がピーマン嫌いなら致し方ないでしょうね。野菜嫌いの子どもは当然便秘になるけど、自分も便秘だから遺伝でしょうと無頓着。

いくらなんでも普通の家はここまでひどくはないでしょ、受けを狙って特にヘンな事例ばかり選んだんじゃないの・・・と、一般の人と同じ感想を当初は私も持ったのですが、文章を読む限り、どうもそういうわけではないようです。

我が身をかえりみれば、他人の食卓をあざわらう資格などありません。とうてい人様には見せられない食事内容なのです。

私もお菓子やアイスをご飯代わりにした時期もありましたが、今では「健康オタク」への道をへろへろと歩みつつあるから、彼らよりははるかにヘルシーな食生活だと断言できます。
発芽玄米ご飯と野菜が主体の粗食だし、最近では四足獣の肉は極力避け、惣菜や加工食品はまず買いません(別のサイトではしばしばインスタント食品を紹介しますが、すべていただき物です。ビンボー症ゆえいちおうありがたく食べるけど、自費で買うにはフトコロ貧しすぎ)。

野菜料理はめったに作り置きをせず、毎度一から調理するほどこまめです。
ヘンかもしれないのは、その食べ方。そもそも「料理・調理」と呼べる代物ではないのです。仮に「あなたのある日の食卓を撮影してください」と言われても、絶対に1枚の写真にはおさまらない。「食卓」が必要ないこともしばしば。

たとえばある日の朝食。
起きて、マグカップに水を1杯入れて飲み、しばしの後そのカップにトマトジュースを注いで飲みます。
カップを洗わず、ヨーグルトとオリゴ糖とコラーゲンをぶち込んで、スプーンで食べます。
ラッキョウの容器を開け、3粒ほど指でつまんでカリカリ。
バナナを1本食べます(バナナは果物ではなく、主食扱い)。
カップに水を注ぎ、総合ビタミン剤を1錠飲みます。
さすがにカップを水洗いして水を注ぎ、電子レンジで沸騰させ、紅茶のティーバッグを入れて蒸らします。そこへ豆乳を注いでミルクティー。

別な日の昼食。
まずはトマト。絹のハンカチでこすって流水で洗い、流しの前で丸かじり。壁などに汁が飛んでもすぐに拭き取れるようにとの配慮です。
次にキュウリを洗い、端っこをポキッと折って、スライサーでシャッシャッと千切りにして皿に落とし、少量の酢とマヨネーズと胡椒をかけ、ソファーに座って食べる。ここまではまあ、まとも。
その皿を洗いもせず、ゴボウをスライサーで千切りにして、レンジでチンし、ゴマ和えにして食べる。
たんぱく質が足りないかなと、納豆をパックから直接食べる。お皿や小鉢に移すと、ヌルヌルしちゃうんだもん。
ゴマ粒の残るゴボウの皿に、レンジで温めたご飯をのっけ、カツオ節をかけて猫マンマ。
納豆のたれは1/4を納豆に、1/4をゴボウに、1/4をご飯にかけて、残りは捨てます。

これだからたまにしか皿洗いをしなくて済むのよね。

スライサーと電子レンジは必需品。これなしでは生きてゆけません。

お味噌汁も茶碗に具(豆腐とシメジなどせいぜい2種類)と味噌と水を入れてレンジで作ることが増えました。化学調味料などは使いません。シンプル味噌味に慣れれば、だしの素なんかこの世になくていいものだと思うようになります。
ときたま実家からじゃがいもをもらったりしたら、鍋で『具沢山味噌汁(じゃがいもだけがたくさん入った味噌汁)』や具沢山スープなどを作り、しばらくはそれがご飯代わり。こういうときにしか鍋の出番がないのです。アルミの鍋はアルツハイマーの原因という情報もあるし。

が、健康オタクとは因果なものです。健康情報を漁っていると、「電子レンジは危険だ」という記述に遭遇しました。そういえば我が家では、レンジとラジオは壁を隔てて6メートル以上離れているのに、レンジ使用中はラジオに雑音が入るんです。
玄米菜食中心だと、残留農薬、カドミウム、硝酸塩などの危険も増大。イソフラボンの過剰摂取も心配・・・と、ネタは尽きません。あまり神経質になると、ストレスがたまって免疫力が低下するしねー。

さて、岩村暢子は食卓風景をテーマに数冊の本を著していて、私は3冊ほど読みました。
個人的におもしろかったのは『<現代家族>の誕生 幻想系家族論の死』(2005年)。なんとも物々しいタイトルですが、読めば内容をそのまま表しているのだとわかります。現代日本の食の乱れがなぜ、どのようにして起きたのかを検証するひとつの試みで、なかなかドラマティックです。
昔、『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン)を読み、これは上質のミステリー小説だと驚嘆したのですが、それにも似た感慨を味わいました。謎解きの妙味はフィクションだけの特権ではないのです。
もっともこのタイトルでは、興味を持つ人はごく少数でしょう。文庫化に際しては『親の顔が見てみたい調査』と、かなりくだけた表現に落ちたようです。
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投稿者:ルノ 08:48 | コメント(0) | トラバ(0) | 世相=世間相場?
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