2013年08月07日

ボタンの誘惑

星新一のとあるショートショートに、なにもしない装置というものが登場します。
正確には全く何もしないわけではなく、その中央にあるボタンを誰かが押すとボタンは引っ込み、横についている腕のようなものがボタンを引っぱり出すというしくみです。なんの役にも立たないから、じき人々から見放されましたが、通りかかった人がついボタンを押すことはありました。
歳月が流れ、めっぽう丈夫にできているこの機械は、大災害にも核戦争にも耐えて生き残りました。

実はこのボタン、一種のタイマーでした。
ボタンのようなものを見ると押してみたくなるのが、人の性分です。最後にボタンが押されて千年後、装置は人類が絶滅したと判断し、そこで初めてボタンをもとに戻す以外の動作をおこなったのです。それは・・・。
(この話は『妖精配給会社』に収録。)

この作品が書かれたころ、押しボタンというものは出っぱっているのが当たり前でした。本能的に押したくなるのは、その形状のせいでしょう。
今では軒並み平らになりつつあります。見た目もスマートだし、故障しにくいらしいし。安物家電には出っぱりボタンがまだ健在ですが、押しても引っ込まないものは、なんとなく物足りません。

パソコンを使っていると、ボタンを押す行為は日常茶飯です。
典型的ボタンはシンプルながらも立体的にデザインされ、クリックすると陰影が変化して引っ込んだように見えるという小細工が、ボタンを押すのに似た感触を与えてくれました。
最近はそういう立体的なボタンが減ったようです。現実のボタンに近づいたのですね。
そしてタッチパネルの普及は、マウスを駆逐し、「クリック」という言葉を死語となしてしまいそうな勢いです。ボタンを押した手ごたえには、あのクリック音も一役買っていたと思うのだけど。

それでも「ボタンを押す」とは「選択する」ことだから、消えてなくなりはしません。

このごろ、ヤフーのお天気情報を見るのが日課になってしまいました。

ページ内に『みんなで実況、今の天気』というコーナーがありまして、同じ地域にいる人々から、今の実際の空模様についてアンケートをとり、1時間分を集計しています。

これに参加する人が意外に多いのです。どうして朝の4時から200人超もの人々が天気情報なんて地味なページを見てるんだぁ(と首をかしげる私だって朝4時に見てるわけだ)。
むろん毎日毎時、数百人が実況に加わっているわけではなく、数名というときだってありますが。
私はスルーしてます。ログインなど面倒な手続きが必要だろうと思い込んでいたのです。

その天気実況、アンケートボタンは「晴れ」「曇り」「雨」「雪」の4種です。5月中旬以降、「雪」は消えました。

私が住む地域で雪が降るのは、年に数回です。
真冬でも「雪」ボタンはしばしば受付中止となっています。予想気温から自動的に設定されるようですが、絶対に雪が降るはずがないと断言できる日であっても、雪ボタンを押せる状況にあれば、押すヤツが必ずいるんですよね。それもひとりやふたりにとどまらない。

ほかのボタンが受付中止になることはなく、県内全域土砂降りというような状況下に「晴れ」を選ぶ人も、当然ながらいます。

そういうのって、ちょっとかっこ悪いと思いませんか? 本人はささやかなあまのじゃく性を発揮してご満悦でも、単にアンケートの精度を乱しただけ。見ている人々も正確な結果なんか期待していないでしょう。

ともあれ人間ってのは、ボタンを見れば押したがる。ボタンが複数あるなら、変わったもの、珍しいものに手が延びる(こともある)というわけです。

昨年だったか、文部科学大臣が大学新設の申請を却下して物議をかもしました。
少子化かつ不景気の中、大学というおカネのかかる施設が年に3つも4つもポコポコできてしまうなんて、庶民としては大いに疑問ですが、大臣がたまには違うボタンを押しちゃえと気まぐれを起こしただけ・・・みたいな印象もぬぐえません。こういう人に核ボタンを委ねたら、きっと楽しいぞう。
投稿者:ルノ 18:38 | コメント(0) | トラバ(0) | 世相=世間相場?
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