暖地に住む私は現物を見たことがありません。
フェルトで作ってみました。なかなか可愛いでしょ?

水芭蕉(ミズバショウ)がその可憐さをもてはやされるのに比して、ザゼンソウには不気味なイメージが定着しています。形は同じなのに・・・。
『色の白いは七難隠す』って真実ですねえ。
このザゼンソウ、英語でskunk cabbage(スカンクのキャベツ)といいます。哲学的な和名とは月とスッポン。確かに悪臭を放つそうです。それにしてもキャベツとは・・・。
我が家のチンケな和英辞書にはむろん載っていません。私がその英名を知ったのは、ラヴクラフトの小説からです。
H・P・ラヴクラフトはアメリカの怪奇小説家です。生前は無名でしたが、彼が創出したクトゥルー神話というムーブメントは、多くの現役作家を巻き込んで世界中に広まり、今も拡大を続けています。
短編『異次元の色彩』を読んだ当初、アメリカにもザゼンソウがあるのかと驚きました。実は北米が原産だとか。
ラヴクラフトが生涯を過ごしたニューイングランドは緯度が高く、緑豊かな地域です。森に入れば泉のほとりの薄暗がりにザゼンソウが生えていたのでしょう。その悪臭と異様な形・色彩は、ホラー作家にとって恰好のモティーフだったに違いありません。
『異次元の色彩』の原題は"The Colour Out Of Space"。
アメリカ人なのにブリティッシュな綴りからも窺えるように、ラヴクラフトは言葉や文章に凝る人でした。作中には英語国の人にも馴染みの薄いレア語や専門語、さまざまな造語や独創的な名詞が登場します。肝心のクトゥルー(Cthulhu)からして、発音は謎に包まれています。
英語学習において一歩上行くアナタ、次はラヴクラフトを原書で読んでみませんか?
かくいうわたくし、手元にアーカム・ハウス社刊のベスト短編集"The Dunwich Horror And Others"があるけど、読む気力はゼロ・・・。