2016年08月29日

迷い蝉

1匹のセミが地上に出てきたら、世界は戦争で滅んでいて、生き残っていたのは人間の少女がひとりだけ・・・という超短編マンガがありました。確か松本零士の若いころの作品。

世の移り変わりはめまぐるしく、6年後には何がどう変わっているか、予測もつきません。
かたや6年どころか10年も前から、なんの進歩もないブログを持つ人も、ここに約1名。

セミの幼虫って、数年間、種類によっては十数年の間、暗い地中で何を考えて過ごすんでしょうね。退屈じゃないんだろうか。

セミがあんなにも気ぜわしく鳴くのは、早く連れ合いを見つけて子孫を残さなきゃと焦っているからのようにも思えます。もう少しオトナの時期が長ければ、多少はのんびり過ごせるのに・・・。

住居の向かい側に小さな公園がありまして、毎日毎日、ジーコジーコ、ジャジジャジと鳴きまくっています。道路を隔ててもかなりの騒音だから、本人たちにはもっと大音量。難聴の心配はないんだろうか。

とまあ、退屈だの、気ぜわしいだの、難聴だのって、単純に人間からの見方なんですよね。
セミとしては、進化の果てに、幼年期と成熟期のバランスや鳴き声の大きさなど、これがベストという状態に落ち着いたのでありましょう。

昔、セミのそばで大砲ぶっ放したら逃げなかったので、セミは音が聞こえないんだと言った人がいましたな。

調べたら、ファーブル大先生でした。
ファーブルって人は、自分で芋虫の匂いを嗅いでみて、全然匂わないから、この芋虫を狩る蜂は嗅覚を頼りに探し当てるのではないと結論づけるようなところがあって、虫と人間の感覚を同一視していたような。

セミがやかましいのは事実だけど、やっぱり私も日本人、さほど気になりません。夏だからそんなもんさ。

ある朝、やけに大きな鳴き声が聞こえてきました。普段は気にしない私でも耳をふさぎたくなるほど。
そばの電柱に飛んできたんだろうか。ベランダに出てみると、足元からジジジジッ。床に大きなセミがへばりついていました。

ベランダのセミ

羽が透明でボディが黒光りしてるから、クマゼミかなあ。

セミは前後に這ったり、横歩きしたり、時々ぴょんと飛び上がったりして、その合間におなかを激しく震わせて、ジャジャジャーと鳴くのです。1回の鳴き時間は10秒足らず。
鳴き声は大きくて、一見元気よさそう。ただし、近づいても逃げないから、弱っているのかもしれません。

鳴き声はだんだん間隔があいてきて、午後にはほとんど聞こえなくなりました。
死んだんだろうかと、のぞいたら、まだうろうろしています。セミらしく鳴くのはやめたようだけど、時折りブジィー、ブジーと短く音を発します。あんまり無事とは思えないし、できればどうにかして飛んでいってほしいんだけどねぇ。

その後は排水口のふたにとまってじっとしています。
排水口のセミ

そうこうしているうちに激しい夕立が来て、ベランダは洪水のようになりました(セミにとっては)。
うちのベランダには屋根がないから、もろ雨に打たれてしまうのに、移動しないのです。

翌朝、まだ同じ場所でもぞもぞと動いていました。しかし音を立てることは全くなく・・・。

昼過ぎにはお亡くなりになっていました。
仰向けセミ

それから3週間。
公園はめっきり静かになりました。ときたまツクツクホウシが鳴く程度です。

排水口のセミは原形をとどめたまま、まだそこにいます。
公園に落ちた死骸や抜け殻は、微生物や小さな虫たちがさっさと片づけてくれるだろうに。
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投稿者:ルノ 08:42 | コメント(2) | トラバ(0) | 虫のいい話
2013年08月02日

小さな居候

もし私たちの拡大視力が顕微鏡並みになったとしたら・・・これは恐怖です。
なにしろ、空中を漂う塵埃やカビ胞子やダニのフン、畳やじゅうたんの上をうごめくダニたち、飲み物に浮遊する異物などが、バッチリ見えてしまうんですから。キスをしようと恋人の顔に唇を近づけたら、小鼻の毛穴からニキビダニさんがコンニチワしていたり。

まあ人生、見えないほうが幸せなのは、ミクロの物体ばかりとは限りませんけどね。

見えていてもいなくても、ヤツラは確然とそこにいる。
普通の免疫力を持つ人なら、それらを吸い込み、飲み食いし、四六時中肌にまとわせて、いっこうに問題はありません。

科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体』は、昨今個人的に注視しているサイトです。
科学的根拠ってそもそもなんなのか、科学的根拠に基づけばどんないいことがあるのか、シロートのわたくしにはよくわかりませんが、厳しくも真摯な姿勢のサイトのように思います。

そこでひところ読者の興味をひいていたのが『ヤマザキパンはなぜカビないか』に関する一連の記事です。
読んでみたいかたは、トップページのランキングになければ、過去ログからお探しください。

衝撃的だったのは、ヤマザキパンがどうのではなく、パンの表面に肉眼でごく小さなカビを認めた時点で、すでにそのパンはカビで覆いつくされているということです。むろんパンに限りません。
考えたら、そうですよねえ。カビの胞子なんて目に見えるもんじゃなし。見えたとしたら相当成長しているはず。

年配の人は「餅にカビがはえるのは当たり前」「そうめんのカビなら大丈夫」などと根拠のないことを言って平気で食べます。カビを食べることが病気や不調に直接つながったケースがないという経験的事実に基づく判断であるからして、「根拠がない」は酷評ですが、現代医学は微量の毒物が長期間蓄積されて起きる害も解き明かそうとしているから、見えるほどになったカビを摂取し続けるのは危ないと心得ておくべきでしょう。

などと考えていた矢先、ふと目についた1冊の本。
人類とカビの歴史』(浜田信夫/朝日新聞出版)

なんだか地味というか、お堅いというか、学術的というか、大仰というか、「せっかく著したからにはじゃんじゃか売ってやろう」てな意欲などまるでなさそうなタイトル。ジャンルがジャンルだから、致し方ないでしょう。
でも内容は身近でわかりやすく、カビに関する実用的知識が得られて、ためになります。じゃんじゃか売れてもいい本です。と、強力におススメ。
石けんカスにカビは生えないけど、界面活性剤を栄養にするカビはいるとか、食器洗い機の中でもカビが繁殖するなど、意外な事実も。食器洗い機の高温にも耐えるカビは体内に入り込んで真菌症を引き起こす恐れがあるとかで、要注意です。

こういう本、清潔に暮らしているという自信をお持ちのかたは読まないほうが無難です。ショックを受けるから。

私なんか、慌てて洗濯機を買い替えましたよ。
それだってほんの気休め。新しい洗濯機も、古い洗濯機で洗った衣類からカビが伝染して、あっという間にカビだらけになるそうです。とりわけ、今主流の乾燥機能つきがヤバいのだと。

そうやってカビだカビだと大騒ぎして忌避しても、完全にのがれられるものではないし、長年カビと暮らしてきてなんらかの健康被害を受けたわけでも(自覚的には)ないのだから、あきらめて共存していくのが賢明なのでしょうね。

家の中にはもっと大きな居候たちがいます。

わが家の虫図鑑』(トンボ出版)は、表紙から想像できるように、なんとも美しい本です。オールカラーだしぃ。
脚の数・ハネの数、それに居場所で分類されています。虫を見つけたら、脚と翅を数えて図鑑をひくわけですね。ダニの脚なんて肉眼で数えるのは無理だけど、蜘蛛と同じく8本。

家に虫が入り込むのは、なにも人間に悪意を持ってのことではなく、人間が彼らの好きなものをいーっぱい用意してくれているから。しかし人間としては、食べ物や服や本や床や血を、ほんのひとかけらだって分け与えたり共有するのはゴメンこうむる。結果として、家の中のほとんどすべての虫は害虫です。
心なごむのは、ごくたまに庭に飛んでくるナナホシテントウくらいか。

わが家にはクモがけっこういるんです(たぶんハエトリグモ)。体長3ミリから8ミリくらい、網を張らず壁を這い回っていますが、別に嫌いじゃないから、追い出したり掃除機で吸ったりなんかしません。「クモさん、クモさん、家賃代わりにコバエ取ってよね」と言い聞かせているけど、やっぱ日本語じゃダメかな。

蚊が入り込むのは年に1度あるかないかだけど、コバエは時たま見かけます。キッチンの壁にとまっているのを見つけたら、濡れ雑巾で押さえようとしますが、私がとろいのか、ハエが素早いのか、両方なのか、3回に2回は取り逃がします。逃げたヤツもいつしかいなくなります。屋外へ脱出したのか、クモの餌食となったのかは不明。

本の中にごくごく小さな虫が這っているのもよく見ます。探せば家じゅうにいそうな気がする。
胡蝶蘭の鉢に長年巣食っていた、白い粉のような虫は、殺虫剤をバンバンかけてやっつけたのですが、その影響か葉っぱが3枚も黄変して枯れかけています。虫がいたころのほうが成長がよかったような・・・(T_T)。

買ってきた野菜にも・・・特にキャベツ。青虫なら愛嬌あるけど、外葉を数枚はいでも見つかる1ミリ足らずの黒い虫は、なんなのかよくわからないからブキミ。見つけたら、60℃くらいのお湯に丸ごと浸したり、奥まではいで煮込みに使ったりしますが、胃の中に入ってしまうのもいるでしょうねえ。

この図鑑のコラムにも『われわれは小さな虫やその破片を見過ごして食べていると想像できる』と書かれています。昆虫研究者なんて浮世離れした優雅なショーバイって印象だけど、食品異物検査という実務もこなしているんです。

例の「お好み焼き粉ダニ事件」は強烈でしたが、人は多かれ少なかれ虫を食べて生きているんだと思います。虫たちよ、食べられたくなければ、森や野原でひっそり暮らしなさい。
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投稿者:ルノ 10:13 | コメント(0) | トラバ(0) | 虫のいい話
2007年10月05日

The Caterpillar

少女漫画家・忠津陽子がデビュー前、伝説のマンガ誌COM(こむ)にイモムシ漫画を投稿し、『ペットにしたいほどかわいいイモムシ』と絶賛されたという事実を知るのは一部マニアのみでありましょう。などといいつつ私はマニアでもファンでもない。

芋虫と青虫は別物なのか。
事典によれば、蝶や蛾の幼虫で、毛がなくボディが太いものを芋虫、緑色のものを青虫と呼ぶのだと。きっちりした定義はなく、見た目で判断しているようです。蛾のほうが太めだし、芋虫の代表は蚕です。
お芋のような形だから、ではなく、昔は芋の葉を食べると思われていたゆえの命名だそうです。
毛が生えていたら、色、形にこだわらず毛虫です。
英語ではどれもcaterpillarです。

江戸川乱歩の短編『芋虫』は、戦争で手足を失った男の話です(グロテスクだが感動的と言う人も)。
とはいえイモムシにはちゃんと足があるのですよ。蛆虫にはないけど。

昆虫の足は6本です。芋虫の足は前方に3対、おなかに4対、しっぽのあたりに1対くらいが標準のようです。ボディは13節。後ろのほうの腹脚と尾脚は成虫になったら消えます(ちょっとうろ覚え)。
芋虫の中には大きな目玉をもつものがいます。あれは本物の目ではなく、敵を威嚇するための模様です。親になっても翅に目玉模様があるものが多いですよね。大きな鳥に対してどの程度効果があるか疑問ですが。

蝶は美しいし、花粉の媒介に貢献しますが、幼虫は人間にとって野菜や果樹を荒らす害虫です。

動けない植物だからって、ただ虫にやられっぱなしかというと、それなりに防衛策を講じてきました。毒を蓄えたり、刺激性の物質を出したり。
かたや昆虫側も負けていません。毒に強い体になり、しかも体内に貯めた毒物のおかげで鳥の餌となることを防ぐという一石二鳥の進化を果たした蝶もいます。さらにはその毒蝶に外観だけ似せて防衛する蝶もいるのです。

人間としては、野菜や果物に毒が含まれたら困ります。ので、せっせと毒(農薬)を振りかけたりして。

植物の中には、虫にかじられたらある種のホルモンを出すものがあるそうです。それをキャッチする寄生蜂がいて、さっそく飛んできて幼虫に卵を産みつけるわけ。
植物も動物も必死で生きているのです。

フェルトでイモムシのぬいぐるみを作ろうと思ったとき、漠然と頭に浮かんだのは、ダンゴが並んだようなフォーム。実際はそんなにコロコロしてはいないんですねえ。
イモムシちゃん
おツムに赤いリボンをつけて。Cata cata cata caterpillar girl.
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投稿者:ルノ 21:29 | コメント(12) | トラバ(0) | 虫のいい話