そんなあ・・・。ことに臨む前に食われちゃったら、オスのレゾンデートルはどーなるんだ。
だいじょうぶ。
カマキリは獲物に頭からかぶりつくのです。
頭がなくても、胸までかじられても、下半身はしばらく生きているので、メスが食事に夢中になっている間に、残った部分で必要なことはやりおおせてしまいます。
てな意味のことを英語のブログには書いたのですが。
日本語ではもちょっと中身がないとねえ。以下、受け売りをいろいろ。
蜘蛛も交尾後にオスが食べられてしまうことがよくあると聞きます。ゴケグモの名の由来はそれです。
しかし自ら犠牲になるわけではなく、すきあらばちゃんと逃亡します。
ジョロウグモなどでは、少女蜘蛛の網の隅に何匹かの花婿候補が居候して、時にはご飯を分けてもらいながら、彼女が大人になるのを待ちます。そしてメスが最後の脱皮を終えたときに、すかさず襲いかかるのだとか。脱皮はすごーくエネルギーを消耗するので、元気なメスもさすがにぐったり。とはいえオスはメスよりもだいぶ小さいし、それまでにオス同士で順番争いをして手足の2、3本なくしたヤツもいるから、逃げ切れないケースも多々あります。
参考文献:『クモの巣と網の不思議』(池田博明:編/文葉社/2003年)
無事逃げ延びたら、別の巣に行って再婚の機会を窺うのでしょうか。
秋にはひとつの網に2匹以上の蜘蛛がいるのをよく見かけます。

実はこれ、ジョロウグモかどうか知りません。
右上の黒っぽいかたまりは残飯? クモは固形物は食べず、必ず殻が残るのです。クモの残骸らしいものもけっこうあります。
そんなふうに共食いを常とする蜘蛛には、貪欲、獰猛というイメージが強いのですが、コモリグモなどに見られるように、かなり家庭的な生活をする種類も多いのです。
カバキコマチグモは草の葉を折り曲げて巣を作り、その中で子育てをします。母親は卵を守り、世話をして、最後は子どもたちに我が身を食べさせてしまいます。人間の感覚からすれば衝撃的です。虐待親に見せてやりたいもんだ。
母グモは子どもが独り立ちするころには肉体も衰えてあとは死ぬばかりだから、合理的な利用法とも思えます。
『昆虫と遊ぶ図鑑』(おくやまひさし/地球丸/1997年)には、カバキコマチグモの巣や子育ての経過写真などが載っています。
同様の献身はほかの肉食虫などにも見られます。
ハサミムシはごみの中など不潔な場所に生息し、見た目の無気味さはゴキブリにも匹敵します。が、害虫を食べるから生きた農薬としての活用法も研究されているとか。
この虫は母親が卵や幼虫の世話をするので、昔から母性愛の象徴として知られています。母虫は卵にカビや埃がつかないようにきれいになめ、孵化したら幼虫を狙う蟻などと戦って我が子を守ります。そうやって疲れきった母親を最初の食餌とすることで、子どもたちは体力をつけ、自立するのでした。
『図解雑学 昆虫の不思議』(2006年/ナツメ社)より。
当の虫たちには愛情だの残酷だのといった感傷はありません。
すべては子どものためです。それはDNAに刻印された種の保存の一環なのです。
とはいえ・・・タガメだったかな。父親が卵を背中に乗せて保護するので「子負い虫」と呼ばれています。でもこのオヤジ、孵化したとたんそのいきさつを忘れ、子虫を餌だと認識しちゃうそうな。だから子どもたちは大急ぎで逃げ出します。
所詮虫けら・・・そう思いますか?