2006年09月16日

溺れる者は

溺れる者は・・・次に続くフレーズはなんでしょう。

1:息ができない
2:藁をも掴む
3:わらにもすがる
4:笑ってる場合じゃない

時たま『藁にもすがる思い』で質問(や要求)を寄せてくる人がいます。『ワラクズなんかに期待しちゃいないが、とりあえず意見を聞いてやろう』といった不遜さはみじんもなく、真に切羽詰まった様子がうかがえるのですが、ヒネクレ者の私は、どうせわらわはわらじゃよ、とすねたりします。

古い辞書には『藁にも縋る』という言い回しは載っていないようです。
最近の国語辞典では『困難に直面したとき、頼りにならないものにまで救いを求めようとするさま』との解説があります。
これが『溺れる者は藁をも掴む』から派生したのは明白です。といって、『溺れる者は藁にも縋る』とつなげることは少なく、通常は下の句だけ使われます。

その経緯を推理してみました。

ことわざや慣用句は一部省略しても概ね通じます。「ほら、溺れる者はなんとやらって言うじゃないですか」みたいに。でも「藁をも掴みたい心境です」ってのは、なんだかしっくりこないような・・・。まして頼る相手を藁扱いしている場合には、意識の底にそこはかとない後ろめたさがあって、「掴む」のはちょっと乱暴かなとブレーキがかかった結果、「縋る」に置き換えられたのでは? 「縋る」のであれば、「ワラさま、ワラさま、捨てないで〜」と、自分を卑下する印象を伴わせることもできますし。

『藁にもすがる』であれ『溺れる者は藁をも掴む』であれ、相手を藁に例えて頼み事をするのが非礼だという説は、たぶん時代遅れなのでしょうね。今の若いもんは目上の人を会合などに誘うとき「枯れ木も山の賑わいです」などと言うとか。
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投稿者:ルノ 19:49 | コメント(4) | トラバ(1) | イチャモン日本語
2006年09月01日

背に腹は代えられぬ

けっこう気軽に使われる慣用表現です。意味も用法も正しく広まっているし、「ら抜き」の汚染も受けていません。
なお、手持ちの国語辞典では2冊が「替えられぬ」で出ていて、1冊には「代えられぬ」と表記されています。代替可能な漢字なのでしょう。
英語ではことわざの“Near is my shirt, but nearer is my skin”を対応させたりするけど、ニュアンスがずれますな。

つらつら考えると、なんとも奇妙な言い回しではありませんか?
「背に腹を替える」って、いったいどういうこと? そんなことが可能なんでしょうか。不可能だからこそ「替えられぬ」となっているんだけど、むしろ「仮にできたとしてもするわけにはいかぬ」という意味合いが強いように感じます。

子供時代の私の解釈では、おなかを背中にしたらおなかが両側にできて食べる量も2倍必要で家計がパンクするからダメなんだ・・・って、せこいような案外いじらしいような。

そもそも背と腹とではどちらが大切なんでしょう。

「腹は背の代用にならない」ってことですから、背は腹よりも格が上ってことですよね。
そりゃ腹には支える骨がないから、背に持ってきたらグニャグニャして上体が折れてしまう。
とはいえ、腹部には背中とは比較にならないほど重要器官がみっしり詰まっているんですよ。背中がなくても生きていけるかもしれないけど、背を腹の代わりにしたら人はたちまち死にます。昔の人だってそのくらいわかっていたから、ハラキリなんて手法を編み出したんでしょ。「背は腹に代えられぬ」だったら納得なのにねえ。

とまあ、夏休み明けで少しはましな話題を持ってくるかと思えば、相変わらず詮無きことをうだうだと。

別に寝暮らしていたんじゃありません。実はこのたび、サイトに広告を貼ることにしました。はい、背に腹は替えられぬというわけです。ふぉっふぉっふぉ。

ついでながら、以前作った人形を近所のショップで売り出しました(ホテルニューオータニ博多の隣・・・出張の際はお立ち寄りください)。背に腹は代えられぬとばかりに、思い切ったお買得価格で出しております。これで不良在庫が一掃できるかどうかは不明ですが。


付記:
広告はまだ載せていますが、人形は結局売れずに撤退しました。(T_T)
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投稿者:ルノ 19:39 | コメント(3) | トラバ(0) | イチャモン日本語
2006年07月04日

破天荒な人

まず破天荒とは・・・『天荒を破る』ことです。天荒とは天地が別れる前の混沌とした状態、だそうな。
そこから破天荒は『それまで誰もやらなかった驚嘆すべきことを成し遂げる、またはそういう現象が起こるさま』を指します。

具体的には、唐の時代ある人がムズカシイ官吏登用試験に合格したことが発端と辞書にはあります。
えっ、その程度?
その人(名前は劉蛻)の出身地は『天荒』とバカにされるほど荒れ果てたド田舎(って、三国志でお馴染みの荊州だよ)だったので、みんなが驚いたわけなのです(出典:北夢瑣言)。
別の辞書は『一説に天荒とは試験に落ちることで、破天荒は意外な及第の意』とあっさり説明しています。

繰り返しますと、破天荒は「行為」や「事柄」を形容する言葉なのです。
類義語は「前代未聞」「未曾有」。前代未聞はちょっと珍しいことにも使うけど、未曾有は大災害や重大事を指しますね。

しかるに最近目にする『破天荒な人物』『破天荒な性格』という表現。いったいどういう人なんでしょう。誰もやらなかった驚嘆すべきことを次々と成し遂げた立派な人物?

『高校時代は番長としてならした破天荒な男』なんてのを見ると、単なるハチャメチャ人間でも破天荒になっちゃうらしい。「破」や「荒」の漢字から受ける印象を自己流に解釈して使っている例が多いようです。

気持ちはわかりますよ。ニュアンスはけっこう伝わってきたりします。
無茶で突飛な言動で周囲を驚かせたり呆れさせたり、また迷惑をかけまくるが、志は大きく憎めない性格で、将来を有望視されている(もしくは実際に大成した)という複雑な意味合いに、語り手(書き手)のほほえましくも好意めいた視線まで含ませてたった3文字で表せる単語がほかにあるでしょうか。

人以外へのヘンな事例も。
『破天荒な英語力』・・・英語の天才かと思いきや、自己のブロークン・イングリッシュを謙遜したつもりらしい。こうなると何をかいわんや。「好き」を“I see tell”と訳すようなものかしら。
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投稿者:ルノ 12:12 | コメント(0) | トラバ(0) | イチャモン日本語